13-5. デジタルPCR
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通常のPCRからリアルタイムPCRと進化してきたPCRだが、近年、全くコンセプトの異なる新たなPCR:デジタルPCRが次世代PCR(あるいは第三世代PCR)として登場してきた
1) 原理
通常のPCRは鋳型DNA濃度が極端に薄いと生成物が十分な量に達するまでの時間が非常に長く、PCR産物が検出できない
しかし、10分子のDNAを含むPCR反応液10 μLを1万個の1 nLの液滴(分画)に分割すると、DNAが1分子入った分画が10個とDNAの入っていない残りの分画ができる
これらをPCR反応させると、DNAのない分画ではDNA増幅はまったくないが、1分子の入った分画ではDNA濃度が元の1,000倍に濃縮されたことになり、PCRが十分にモニターできるまでに反応が進行する
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つまり、結果が増幅があるかないかというようにデジタル的に表される
デジタルPCRでは正のデジタル信号(ポジティブシグナル)を示す数が濃度に比例して増え、DNAの絶対濃度が簡単に求められ、しかも個々のPCR増幅効率は定量には影響しないという特徴がある
ただ増幅の特異性は十分高く保つ必要がある
2) 概要と応用
デジタルPCR用の微細な液滴をつくる方法には、微小のグリッドに溶液を入れる微細孔分配方式と、反応液を膨大な数のドロップレット(エマルジョン:微細な液滴)に分割する方法がある
反応には通常のPCR装置と、Taqmanプローブのような特異性と感度の高い蛍光ハイブリダイゼーションプローブなどを使用し、検出には専用の読み取り機を用いる
デジタルPCRは微量のDNA試料を使用して、精密なプライマー特異性と正確な定量性が要求される解析に適しており、微量ウイルスの検出、遺伝子重複/欠失といった遺伝子コピー数解析、1細胞を対象にした遺伝子発現解析などに威力を発揮する